こんなときどうする?

Q1 私は、妻に先立たれましたが、二人の子供(長男A・二男B)がいます。遺言を書かずに私が死んだ場合、息子2人は、遺産について法定相続分どおり(2分の1ずつ)に相続するのでしょうか。

A1 必ずしもそうとは限りません。

あなたの死後、A・Bは、あなたの遺産を一旦共同で所有することになるため、A・B間で財産を分ける話し合い(遺産分割協議)が必要となります。

A・B間での話し合いがまとまらなければ、A・Bは裁判所で遺産の分け方を話し合うことができ(遺産分割調停)、それでも決まらなければ裁判所が分け方を決定します(遺産分割審判)。

このような話し合いや裁判所の判断の結果次第では、相続人が必ずしも法定相続分どおりに相続するとは限りません。

ご子息が遺産分割で揉めることは望んでおられないことと思います。そのような事態を避けるためには、遺言書を作成しておかれることが有効です。この遺言書作成についても、当法人にご相談ください。

 

Q2 私には、二人の子供(長男、二男)がいますが、長男から理由のない暴力を受け続けてきましたので、長男には遺産を相続させたくないのです。これは可能でしょうか。

A2 可能です。

相続人となる予定の人に、相続させるべきでない一定事由がある場合には、その人に相続させないようにすることが可能です。このように、相続人の相続を受ける資格を失わせる手続きを、「推定相続人の廃除」と言います。

この手続きを行うに際しても、廃除事由を適切に記載した申立書を家庭裁判所に提出する等の必要がありますので、いつでも当法人にご相談ください。

 

Q3 私には、めぼしい財産はありません。それでも遺言書を作成しておくべきなのでしょうか。

どのような場合に遺言書を作成するべきなのでしょうか。

A3 相続人以外に財産を譲りたいときには、遺言書を作成する必要があります。

また、法定相続人に相続させる場合で、財産が少額であっても、相続人間で争いが起こることもあります。とくに、子どもがいないとき、異なる親の子がいるとき、あるいは相続人間の仲が良くないときなどは、遺産を巡って争いが起こる可能性が高いといえます。そのため、遺言書で、誰に何を相続させるのかを決めておくことが望ましいでしょう。

なお、相続人がいないときには、最終的に遺産は国に入ります。あなたの財産をどのように処分するのか、希望があれば遺言書を作成しましょう。

そもそも自分は遺言を書いた方がよいのか、どのようなときにどんな遺言書を書けばよいのか、あらかじめ専門家に相談して準備しておけば安心です。まずは当法人にご相談ください。

 

Q4 遺言書はどのような方法で作ればよいのでしょうか。

A4 一般的な遺言書には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言があります。

正しく作成すれば、どれも効力に変わりはありません。

①自筆証書遺言は、遺言書の全文、作成年月日、名前をすべて自筆し、押印します。実印でなくても構いませんが、争いを防ぐには実印の方がよいでしょう。訂正するときには訂正箇所に訂正印と署名が必要です。

自筆証書遺言は、あなた一人でも、費用を掛けずに作ることができます。

②公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝え、公証人がそれを公正証書として作成します。公正証書は公証役場で保管されますので、紛失したり、勝手に変造されたりする心配はありません。

公証人への手数料が必要です(遺産の価額によって決まります。遺産が1000万円の場合、手数料は1万7000円です)。また、作成の際には証人2名の立ち会いが必要です。

多少の必要と手間は掛かりますが、もっとも確実な方法であるといえます。

③秘密証書遺言は、遺言をする人が、署名、押印した遺言書を封筒に入れ、封印します。これを公証人と証人2名で、遺言をした人のものであることを証明する方法です。遺言を作成したことを明確にしたいが、遺言の内容は生前には知らせたくないときに有効です。

①~③のうち、あなたにとってよりよい方法を選択してください。

Q5 兄が亡くなったのですが,私は相続人になるのでしょうか。兄は結婚していますが,子供はいません。両親は既に他界しており,親族は私と兄の二人だけです。兄は遺言は書いていないようです。

A5 亡くなった方に配偶者がいる場合,配偶者は常に相続人になります。

配偶者以外の親族については,子,直系尊属(被相続人の父母),兄弟姉妹の順相続人となることが法律で決められています。順位が上の身分の者がいない場合に,順位が下の身分の者が相続人となることになります。

ご質問のケースだと,お兄さんの奥様とあなたが相続人となります。法律で定められた相続分は,お兄さんの奥様が4分の3,あなたが4分の1となります。

稀に,相談者の方も知らない相続人が存在することがありますので,戸籍をさかのぼって取寄せて,法定相続人をきちんと確認する必要があります。戸籍の調査や,相続手続について不安なところがあれば,専門家がサポート致しますので,お気軽に当法人にご相談ください。

 

Q6 事業をしていた父が亡くなりました。父にはこれといった財産はありませんが,事業のための負債がたくさん残っているようです。父の借金は,相続人で払わなければいけないのでしょうか。

A6 被相続人に借金等の債務がある場合は,相続人が承継することになります。

相続する財産が,借金などマイナスの財産の方が多いことが明らかな場合,相続人は相続を放棄することができます。あなたが相続放棄を行うと、あなたは初めから相続人ではなかった扱いとなるので,お父様の負債を承継することにはなりません。

相続を放棄するためには,原則として,被相続人が亡くなられたことを知ったときから3か月の考慮期間内に,家庭裁判所に「相続放棄の申述」という手続をとらなければなりません。3か月の考慮期間を家庭裁判所に伸ばしてもらうことも可能ですし,考慮期間を過ぎていても事情によっては相続放棄の申述が認められることもあります。相続放棄をお考えであれば,早期に専門家にご相談されることをお勧めいたします。当法人にご連絡いただければ,専門家の紹介を致します。

 

Q7 数年前,ずっと世話をしてくれた従妹に私の財産の大部分を残すために遺言書を作成したのですが,先に彼女がなくなってしまいました。遺言書を書き直してもいいですか。

A7 遺言書は何度でも作成し直すことができます。日付が最も新しくかつ適式な遺言書があなたの最期の意思を反映したものとして有効となります。遺言書を作成しなおす場合の方式(自筆証書遺言,公正証書遺言等)は問いませんが,もし,前回,公正証書遺言を作成された場合には,作成し直す場合にも公正証書により作成される方が,有効性に関し疑問を生じにくいでしょう。

 

Q8 入院中で公証役場には行けないのですが,公正証書遺言は作成できますか?

A8 遺言者が病気等で公証役場に行くことができない場合でも,公証人に出張してもらい公正証書遺言を作成することができます。但し,この場合には公証役場に行って作成するよりも,費用が高くなります。

 

Q9 父親が亡くなったのですが,父親が遺言書を作成していたかどうか調べる方法はありますか?

A9 公正証書遺言(但し,平成元年以降に作成されたもの)であれば,公証役場で調べることが可能です。但し,調べることができるのは相続人等の一部の利害関係人に限られます。

Q10 私のおばあちゃんが重度の認知症になってしまったため、おばあちゃん名義の預金をおろすことができず、おばあちゃんの生活費を出すことができません。どうすればいいですか。

A10 家庭裁判所に成年後見の申立てをすることができます。

後見人となれば、本人に代わって銀行の預金の出し入れ等をすることができるようになります。弁護士などの専門家に後見人になってもらうこともできる場合があります。

申立ての際には、戸籍謄本や本人の財産関係の資料など、たくさんの書類を用意する必要がありますし、必ず希望した人が後見人となることができるわけでもありませんので、後見の申立てを考えていらっしゃる場合には、予め当法人にご相談ください。

 

Q11 自分が認知症になってしまう前に、私の財産の管理などをしてもらう後見人を予め指定しておくことはできますか。

A11 任意後見制度を利用することで、後見人を指定しておくことができます。

任意後見制度を利用するには、公証役場で公正証書として任意後見契約の契約書を作成しなければなりません。

事案に応じて適切な任意後見契約の契約書を作成するためにも、予め当法人にご相談ください。

後見人として適切な人が思い当たらないのであれば、当法人で弁護士などの専門家を紹介することも可能です。

 

Q12 被相続人に多額の借金があるですがどうしたらいいですか?

A12 被相続人に借金がある場合には、相続人が相続分の割合に応じて借金を引き継がなければなりません。しかし、遺産を上回る多額の借金がある場合、被相続人が多額の借金を背負わされることになってしまいます。そのような場合、家庭裁判所で「相続放棄」という手続があります。相続放棄をすると、プラスの遺産も、借金もすべて相続しないことになります。この相続放棄は、原則として死亡から3ヶ月以内にしなければならないので注意が必要です。

 

Q13 相続税の申告はどうしたらいいのですか?

A13 配偶者の有無や相続人の数に応じた一定限度を超える遺産がある場合には相続税が発生します。相続税が発生する場合には、死亡から10ヶ月以内に申告し、相続税を納めなければなりません。

なお、遺産分割協議には10ヶ月の期限はありませんが、遺産分割がまとまっていなくても、相続税は10ヶ月以内に納めなければいけません。

 

Q14 同居をしている息子夫婦と折り合いが悪いのですが、自分が死んだあと財産を勝手に処分して、私の妻に生活費を渡さないのではないか心配です。何かいい方法はありますか?

A14 「遺言信託」という方法があります。

まず、あなたが遺言書を作るときに、その遺言書の中に、①あなたの財産の管理や処分を誰か特定の人に委ねるということ、②その委ねられた人が一定の目的(例えば、「妻に十分な生活費を与えること」とします。)に従ってあなたから託された財産を管理したり処分したりするということの2点を書き込んでおきます。

すると、あなたが亡くなったとき、あなたから財産の管理を委ねられた人が、あなたの財産をあなたの奥さんに生活費を与えるために管理したり処分したりしてくれることになります。

このような方法をとっておけば、あなたが亡くなってからも、あなたの息子さん夫婦が好き勝手にあなたの財産を費消することはできなくなります。

このような「遺言信託」という方法は、ご質問のようなケースではとても有用ですが、あなたの財産の管理や処分を委ねることになりますので、委ねる人は信頼できる人(専門家)でなければなりません。当センターでは、あなたの財産を託せる専門家のご紹介などについてサポートさせていただきます。

 

Q15 私が創業した会社の後継者に悩んでいます。私は、息子らを後継者にしたいのですが、長男と次男の折り合いが悪く困っています。私の死後、スムーズに事業を承継させるには、どのような準備をしておけばよいでしょうか?

A15 事業を承継させたい人(例えば、長男)に会社株式や工場敷地等について、生前贈与、または遺言によって相続させることをあらかじめ決めておくことが有用です。

また、このような問題に対処できるように法律面(中小企業円滑承継法)、税制面(事業承継税制の改正)からの手当てもなされています。

当センターでは、これらも含め、事業や親族間の事情に応じた適切な備えができるよう、専門家による相談、遺言書の作成等をサポートします。

Q16 相続とは?

A16 人が亡くなると相続が発生します。

亡くなった方(被相続人)が「遺言」を残していて、誰にどの財産を分割するかを決めていた場合には、それに従って遺産を分配します。

遺言がない場合や、遺言で決められていない事項がある場合には、相続人の話し合いによって、誰にどの財産を分けるかを決めることになります(これを遺産分割と言います。)。

 

Q17 法定相続人とは?

A17 相続人になるのは配偶者と子です(子がすでに亡くなっていて孫がいる場合には孫も含みます)。子がいない場合には被相続人の親が相続人となります。配偶者、子、親がいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります。

 

Q18 法定相続分とは?

A18 民法では相続人に応じた相続の割合(相続分)を定めています。例えば、夫が死亡し、妻と子2人がいる場合の相続分は、妻が2分の1、子2人が各4分の1ずつとなります。

遺産分割にあたり、各相続人の間で協議がまとまるのであれば、必ずしも法定相続分どおりで分ける必要はありません。

 

Q19 遺産分割の手続は?

A19 相続人全員で協議がまとまれば,遺産分割協議書を作成して遺産を分割します。

話し合いがうまくまとまらない場合には、家庭裁判所での「調停」や「審判」という手続で解決を図ることができます。

 

Q20 寄与分とは?

A20 ある相続人の働きで遺産が増えた場合にその相続人の相続分を増やしてもらえる制度です。

例えば、被相続人が自営の商売をしていて、多額の財産を残したが、実はその長男が長年無給でその商売を手伝っていた場合を考えます。その遺産は、長男の働きのおかげで作られたと言え、他の兄弟たちと同様に分割してはかえって不公平です。民法では、このような場合に商売を手伝っていた長男に他の兄弟よりも多く相続分を認めることができる旨を定めています。それが「寄与分」です。

 

Q21 特別受益とは?

A21 相続人が,遺贈を受けた場合、婚姻や養子縁組のための贈与があった場合、生計の資本としての贈与があった場合に、その取得した財産のことを特別受益といいます。

相続人の中に、このような特別受益を受けている人がいるときに、そのことを考慮せずに残った遺産を分割すると、贈与を受けていた人は、二重に財産を得ることになって不公平です。

そこで、遺産分割のときには,特別受益を含めて相続財産として算定し、その財産は相続財産の中から取得した扱いとすることで、相続人間の公平が図ります。

 

Q22 財産管理契約制度とは?

A22 財産管理契約制度とは,あなたの財産について、あなたの意思を尊重するとともに、あなたの福祉に最適と認められる方法で管理するために、その事務を広く弁護士に委任する制度です。

あなたがこの制度を利用して、財産の管理を委ねる弁護士との間で「財産管理等委任契約」を結びますと、受任した弁護士がその契約に基づいて、あなたの利益に最適と認められる方法で管理することになります。

あなたは、この制度を利用することにより、あなたの大切な財産を護ることができます。当センターは、財産管理に適任の弁護士を紹介するのみならず、定期的にその管理状況をチェックする体制を整えていますので、少々心身が衰えたとしても安心です。

 

Q23 任意後見制度とは?

A23 任意後見制度は、財産の管理等を任せたい人(任意後見受任者)をあなたがあらかじめ選び、その人と任意後見契約という契約を結んでおく制度です。

将来、あなたの判断能力が衰えたときには、家庭裁判所に申し立て、任意後見契約を結んだ人(任意後見受任者)が任意後見人となり、あなたの代わりに財産の管理などをしてくれます。その際、家庭裁判所は、任意後見人の仕事をチェックする任意後見監督人を選任します。これにより、任意後見人があなたの財産を適切に管理されるようになるわけです。

任意後見受任者には、親族等を選んでもよいですし、弁護士等の専門家を選ぶことも可能です。任意後見制度は予め登記をしておく必要があるなど一定の法的な手続きを経ておく必要がある点で、必ずしもその必要がない「財産管理契約制度」とは異なります。

 

Q24 法定後見制度とは?

A24 法定後見制度とは,判断能力が不十分になったとき、家庭裁判所に申立てることにより、家庭裁判所が申立人を助けるのに相応しい人を選び、その人が自分の代わりに財産の管理などをしてくれるという制度です。

任意後見制度との違いは、実際にあなたの代わりに財産の管理をしてくれる人を、あなた自身が選ぶのか、家庭裁判所が選ぶのか、という点にあります。

そして、家庭裁判所に後見開始決定の申し立てを行う場合に、弁護士への依頼を希望する場合にも、当センターが適任の弁護士を紹介し、あなたをサポートする体制も整えています。